「望遠鏡で惑星を見つけたのに子供に見せようとしてる間に消えてしまった」とご質問を受けることがあります。

それは星の日周運動が原因です。

理科の授業でも出てくる言葉なので、記憶にあるかもしれません。「地球が自転しているために、天体が動いて見える」という、あれです。太陽が東から昇り、西に沈むのと同じことです。

普段、月でさえ、じっと見ていても動いているという実感はなかなか得らません。初めて天体望遠鏡で見た星の動きには、「こんなに速いのか!」と驚く方が多いです。

天体望遠鏡で見える範囲はとても狭いです。額に飾られた絵画のように、ある範囲の風景を切り取りさらに拡大して見ているからです。

見える範囲は角度で表されますが、例えばアトラス60に付属する三本の接眼レンズつけた時に見える範囲は、それぞれ下記の通りです。

・K20mm(40倍) : 1.14度
・F12.5mm(64倍) : 0.67度
・Or.6mm(133倍) : 0.34度

倍率が上がると視野は狭くなります。ちなみに地球から見た満月の大きさを角度で表すと、約0.5度です。F12.5mmの接眼レンズは0.67度ですから、満月がすっぽり入るくらいの視野です。

天体が、視野を端から端まで横切っていく所要時間は、下記のとおり。

・K20mm : 約4分50秒
・F12.5mm : 約2分50秒
・Or.6mm : 約1分30秒

例えばOr.6mmなら、見たい星を真ん中に持ってくると、わずか45秒で視界の外へ消えてしまいます。

倍率の高いOr.6mmのままで追いかける場合は、星の動いていく方向にあわせて、微動装置(ハンドル)をゆっくり動かします。見える範囲がせまいので、慣れないとそのまま見失ってしまいます。

倍率を上げていて見失ってしまった時には、思い切って倍率を下げてください。対応が早ければ、低倍率の広い視野の中には、星がまだ見えるかもしれません。

慣れてきたら、子供に見せる時はあらかじめ星の動きを予測して、子供に代わったときにちょうど視野の真ん中に星がくるようにしてあげましょう。